実母が晩年一目惚れして購入したアンティーク桐火鉢。
私が引き継いで持っていたものの、実際使われる事もなく、はや14年経過。
やっと手放す事が出来たグリコール・グリコです。。
桐の火鉢の出身地を探し、工房を尋ねる
我が家にある桐の火鉢は、上部に金輪を載せた擦り傷があるものの、蒔絵自体はぼってりとのせてあり、紅葉と梅の文様をあしらった堂々とした風格のものである。
実母はこの火鉢の上にガラスを切ってもらい、その上にちょこっとモノを乗せられるようにして使っていた。
手あぶり火鉢としてではなく、ちょっとした物置きのようにしていつも自分の近くに置いては、めでていた。
”これってどんなもの?”と『蒔絵、火鉢、桐』などのワードで検索していたら、金沢がヒットした。
そこまでわかったら現地でホンモノを見て確かめたくなり、昨年金沢旅行に行ったのである。
火鉢↓のルーツを探る旅である。
訪ねたのは岩本工房。
桐の火鉢は、桐の原木をろくろ挽きした後、表面を焼いて木目を出して蒔絵を施した工芸品である。
昔は嫁入り道具の一つとして、秋・冬の絵柄の蒔絵を施し、夫と妻用の対で持参したそうである。
そんな北陸の冬を飾る火鉢も、建築技術の向上と生活様式の変化に伴い、昭和の中頃をピークにだんだんと需要が減る。
現在では金沢ではもう岩本工房と後、もう一軒しか桐鉢を作っていないと言う。
また桐の原木自体が現在の日本では少なくなり、日本産の桐を入手するのも困難という。(現在は桐は中国からの輸入がほとんどとか)
更に、原木からろくろ引きをする職人、蒔絵職人も減少の一途でね、、と岩本工房の店主さんが説明してくれた。
現在は大型の火鉢ではなく、その技術を生かした小物作りにシフトしている。
大切に持っていればそれなりの価値になるのはわかるけれど、、
昔は北陸で流行っていた桐の火鉢。
軽くて、木目を活かした生地の上に蒔絵はさすが加賀百万石の系譜が流れる。
多分、後50年持ち続ければそれなりなんだろうな、、とも思う。
けれど今も折戸の中に仕舞われたまま。
実母がなくなってうっかり14年経ってしまい、これからも活躍の見込みなし。
使ってくれそうな実父つながりのご夫婦を思い出し、連絡
実父の縁で今も親戚のように繋がっているご夫婦(私と同じ歳くらい)の家は広く(3Fエレベーター付き芸能人の家のよう)、広い日本間もある。
来客はめちゃ多い。
あのご婦人なら欲しいっていうかしら、、と写真付きのメッセージを送ったら、
なんと二つ返事で”受け継いでいきたい”とおっしゃる。
”受け継ぐ”なんて素敵な言葉だ。
う、嬉しい。
モノは使われてこその、モノ
”〇〇先生の奥様のものなら受け継ぎたい”とおっしゃってくださったので、
ソッコーで荷造り。
最初こそ”グリコさんが使ったらいいじゃないですか”と言われたものの、14年使わないものはこの先も使わない。
素敵なものでも使わない。
私には実母が気に入っていたパーコレーターもあるし、刺繍も出来上がったし、
もう、そんなにモノは要らないのだ。
モノのいく末も案じてサクッと今、手放す
自分が使えるものを少しだけ持って使って、あと死蔵されているモノたちは可愛がってくれそうなところに行ったほうがいい。
なんせこの間の葬儀で高齢者はほぼほぼ認知症を目の当たりにして、改めて自分の後始末は棚上げには出来ないなと感じた。
私だってどうなるかわからないよ〜(汗)。
自分の意識が清明なうちに、死蔵されているものの見直しを再度して、「今」の環境を作りたい。
これは第4期”断捨離”の始まりだ。
Hさん、”受け継いでくれて”ありがとうございます。
私には”受け継ぐ”という続ける度量が有りません。。
どうか火鉢よ、色々な人に見てもらって可愛がってもらえや。
今までお母さんを喜ばせてくれてありがとう。
さらば!
おまけのその後、、
火鉢を発送したら早速写真添付のメッセージ届く。
”客間に、と思いましたが、みなさんに見て頂くほうが一番良いと思いまして、今は玄関のスポットの当たる場所に置かせて頂いています。寒くなりましたら、是非炭を焚き、手を温めて見たいと思います。なんだかとっても幸せな気持ちです。桐の温もりがあたたかく優しい感じですね”
とメッセージが。
良かったね。桐火鉢。
暗い折戸で出待ちより、表に出てみんなに素敵って言われることが一番!
コメント
以前ブログで拝見した時から素晴らしい逸品と思っていました。
生活用品ながら格調高く贅沢な品があって一目で心奪われます。
密かにどうなるのかな・・・と。
あ〜良かった!と人様の大切な物なのに自分の物のような錯覚さえ覚え安堵しました。
昔『レッド・ヴァイオリン』なる映画を観たこと思い出しました。
その時に『もの』って意思を持って持ち主を選んでいるのかな・・・と。
グリコ家に、ただ仕舞われていただけの14年間とは思えません。
意思を持ってそこに居たのだと思えてなりません。
新しい場所、火鉢様も気に入ったようですね☆
とっても素敵です。
ロマンティックな気分に浸りました。
コンバンワ、ブラン様。
そうか、火鉢に捨てられたんですね、、私。(笑)
とにかく陽の目を見て、可愛がってくれるところに旅立ってくれて良かったです。
荷物に入れ忘れた物があるんです。火箸。
熊本城で使われた長い釘に象嵌が施してある物です。
熊本城の復興で使えるものなのかちょっと悩みどころで、美術品になったものでも利用価値があるものならそっちに流そうかな?とも思っています。
あともうちょっと整理は続きそうです。。
あと、大物は螺鈿の家具かな。大きいテーブルは二束三文で手放しましたがチェストはまだ2つ残っています。。。
グリコさん!
玄関、広いですねー。火鉢も居心地よさそうです。
広さに負けない存在感ですね。
グリコさんの詳細な調査を読みながら、昔の北陸って寒かったんだろうなーと思いました。
断捨離第4期!私も一度では終わらないと痛感しています。
うちは今、2期くらいでしょうか。
焦らず、のんびりしすぎず、きっかけをつかんでやりたいと思います。
コンバンワ、もず様。
とっても大きいお家です。玄関も広いし。とにかく来客が多いお宅なので翌日さっそくこの火鉢で盛り上がったらしいです。
良かったです。
そうですね、雪も半端なかったようです。富山まで足を伸ばしてがんじきのある所もしっかり見てきました。
北陸、旅行者にとってはいい所でしたよ。
まだあともうちょっとくすぶっているものをこれから動かしていけたらいいな、と思っていまーす。