いやぁ、まいった、まいったなぁ、の、グリコール・グリコです。シネマ歌舞伎”野田版 桜の森の満開の下”を観ました。2回。もっと観たいです!
煮詰まった時は映画で息抜き
なんたってね、ここのところ気分的に煮詰まっていたから。。
同じハコモノ(家)の中に私の他に人の息遣いが聞こえてくる状態が長く続くと、引きこもりでも煮詰まってきます。
私はワガママなので人に合わせて行動したりが苦手。息抜きは一人がいいです。
そんなわけで息抜きにシネマ歌舞伎”野田版桜の森の満開の下”を観に行ったのですが、、
ヤバすぎるくらい、ハマってしまいました!
野田版桜の森の満開の下は坂口安吾を野田製のミキサーに入れてブレンドした感じ
素材は坂口安吾の「夜長姫と耳男」を置きながらベースに「安吾の新日本地理」を敷き、上手く「桜の森の満開の下」で包んだイメージでしょうか。。
「夜長姫と耳男」を読んでいないと、あれ?桜の森の満開の下ってこんな話だったっけ?ってなります。
映画に来ていたマダム達は退場する時『ちょっと難しかったわね』と話す人たちと、すすり泣く人たちの二手に分かれていましたよ。
野田版桜の森の満開の下は言葉遊びも多く、早口なので最初はついていくのが大変、、
とにかく台詞回しが早くて、最初ついていくのが大変でした。1回目聞き逃したところを2回目に確かめる、そして本当は3回観てじっくり腑に落ちて、あとはもう足繁く通い続けて劇中に耽るしかないんじゃないか、、と思います。
マナコの台詞で、
『ヤクルト入った冷蔵庫』とか俗物っぷりを示す台詞がたくさんあって笑えます。私が好きなのは
オレは銀座のライオンでアルバイトをしていた時のことを忘れない。オレとは縁のない画廊とかいう店のショーウィンドウでマルク・シャガールとかいうやつの美しい絵に出会った。それは、自分が、溶けていくほど美しかった。だのに、ああだのに思わずオレの目は、値札の方へ走ってしまった。美しい絵と知りながら、目が離せぬほど美しい絵が、そこにありながら、なぜオレのマナコは二百五十万と書かれた値札なんかに走り、もう一度ゼロの数を数え、そのうえ、ため息まで漏らしてしまうのだろう。一枚の絵に出会って偉大な絵描きになる人間もいる。けれど一枚の絵に出会って、自分が俗物だと思い知る男もいるんだ
正確にメモれなかったので、これは”贋作 桜の森の満開の下”野田秀樹(新潮社)P115より抜粋
なにこのたとえ!壬申の乱あたりの時代設定ながらこのセリフ。
私もどっぷり俗物だからすごく共感するぅ〜(笑)これを一気に言うんです。
マナコ役は市川猿弥さん。
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野田版桜の森の満開の下、安吾の原作にはない素敵なセリフに心鷲掴み
目は耳ほどにものを言うけれど、耳は無口なまでにものを言いません。目は物欲しげになりますが、耳には欲望がありません。耳はなにものも拒まずに、森羅万象を引き受けて痛くとも、じいっとしている静寂とこのしじま。この静寂、このしじま、、ああ、あの桜の森の満開の下です。そこでは思わず目を閉じたくなるけれど、耳まで閉じているわけにはいかない。まぶたはあっても耳ぶたはないから。いてぇ、、いてえよぉ、、空だ、空が落ちくる、落ちてくるのは青い空、その空が落ちてくるのを押し返そうと、俺はノミを振るいはじめた
注*映画シーンの聞き書き自分メモなんで途中抜けあり、正確さなし
耳男役は中村勘九郎さん。一生懸命さが伝わります。役ドコロを全力疾走する姿はいつしか先代勘三郎さんとリンクします。
野田版桜の森の満開の下の比喩に垂直落下式ブレーンバスターを食らう
なんつっても比喩の自転車に乗りなよぉ〜と耳男がマナコを誘うシーンのセリフがすごい。
自転車に乗って下り坂、この世がずっととこしえに、下り坂ならどんなに楽だろう(中略)とこしえに坂道を降り続けていく姫様と、しかも荷台に地獄を乗せて
注*映画シーンの聴き自分メモなんで途中抜けあり、正確さなし
『自転車に乗って下り坂、この世がずっととこしえに、下り坂ならどんなに楽だろう』坂口安吾テイストをしっかり自分の中に取り入れて野田風に言い換えているところが、、凡人には出来ませんなぁーーー。とただただ感心。
そして極めつけは夜長姫と耳男の象徴的なシーン、
”ノミを振るおうとすると押し返されるんです、”と耳男。
”なにに押し返されるの?”と夜長姫。
”押し返されるんです、落ちてきそうな青空に”
”その正体を見せてあげるわ、甍の上に登っておいで”と夜長姫。
私はただじーっと観ているのが好きなだけ。(中略)なんでも見ているとしまいになんでも見えてきて、そのうちなんでも見つけてしまうの。暑い日にね、人を見ているの。みんなしかめっ面して歩いている。けれど突然にわか雨が降ると。
”いや〜まいった、まいった”って言いながらニコニコして雨宿りしているの。少しもまいっていないのよ。だのに”いや〜まいった、まいった”って言うの。それで私は見つけてしまう。人間はにわか雨とか突然のものが好きだっていうこと。そこでは人はときめいているの。そういうことってない?あるでしょ?わからないうちにときめいているっていうことって
注*映画シーンの聴き書き自分メモなんで途中抜けあり、正確さなし
夜長姫は中村七之助さん。もうね、サイコーっすよ。
他にも無邪気さと残酷さを表す小ネタで、
夜長姫が耳男に、片耳を削がれた仇討ちをしろと命じるシーンがあるのですが、耳男が残った片方の耳を大切にしてますんでケッコーですと辞退すると、可愛いお声で
あたしは大〜いすきな赤い靴の片方をなくしたときは、ボッツ!
と口をすぼめていうんですが、(ボッツというのは燃やしたってことですね)狂気の中に可愛さが滲み出てもう悶絶です。これを見たらもう七之助さん以外夜長姫は考えられません。
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野田版桜の森の満開の下、音楽もバッチリです。
全部の劇中歌が何かはわからないのですが、ラストにかかるプッチーニ歌劇の”私のお父さん”は桜吹雪の中の七之助さんが超絶美しくて涙がブワッ。
音楽でも魅せます、演出ってすごいなぁ。
ラスト勘九郎さんが膝を抱えながら”いやぁ、まいった、まいったなぁ、、”と身じろぎもせず孤独の中にいるシーンのBGMはウエールズ地方の子守唄〜Suo Ganだそうです。
野田版桜の森の満開の下、4月25日で終了のところが多いけれど、東劇は延長
東劇では延長がかかりました。長野では長野ロキシーが5月17日までやっています。月イチシネマ歌舞伎はラストはお楽しみなので、リクエストでもう一回かかってほしいです。
坂口安吾の原本を読みたい人は無料の青空文庫で
「夜長姫と耳男」、「桜の森の満開の下」「安吾の新日本地理」どれも青空文庫で読む事ができます。いい時代になったよ。
あと、変わり種では実は漫画にもなっています。
これを読んでいたので、野田版桜の森の満開の下もすんなり入っていく事ができました。近藤ようこ先生は原作に忠実に描いています。近藤ようこ先生の描く夜長姫も耳男も表情が素晴らしいです。
もちろん、こちらも描かれています。
2回も映画で涙してしっかりデトックス出来ました。ふぅ。
時間があまり取れない私には映画を見にいく時間が貴重です。
今回はまだ興奮が冷めやらぬうちの文章なので、読みづらいところもあるかもしれませんが、私なりに”野田版桜の森の満開の下”を追ってみたレポです。
台詞再現が完全ではないところはごめんなさい!
映画の話は少ないのですがこちらも↓どうぞ。
コメント
コメント一覧 (2件)
あ~、見たい!!
と思わせてくれるレポでしたが、、、
「ちょっと難しかったわね」
というマダムの姿が自分の姿に重なります。。。
つくづくレベルの低い人間だわ。笑
こんにちは、kaorun様。青空文庫で〜「夜長姫と耳男」を読んでいれば、ストーリー掴んでいれば、大丈夫っす。
逆にkaorun様だったらここをこうしたい〜と思うのではないかと。。。
私ならこのギャグを入れたい、、とか色々アイディアも浮かびそうですぜ。ぜひ東劇へ!(回し者ではないですが、やっぱり見て欲しいー!)
kaorun様はクリエイティブ側にいらっしゃるので刺激ビリビリですぜ、きっと。