歳を重ねて、ふと昔を振り返る瞬間があります。自分のことだったり社会情勢だったり。あの時起こったことを知りたい。出版から4ヶ月経った今、改めて放送作家鈴木おさむ氏の「小説SMAP」を読んでみました。
みんなが欲しがったSMAPという御馳走
熱烈なSMAPファンではなかったけれど、私にとってタイガース、フォーリーブス、に続いてメンバーの名前を覚えられた貴重なグループです。
SMAPの楽曲は、ぼんくらなわたしの耳にも何曲も届いていました。
車移動の時のラジオ、娘の運動会、仕事場での余興場面、、
時代の節目節目に届けられる歌声はこんな言葉が欲しかったんだよね、と思わせる「御馳走」でもありました。
ファンの方々も年齢層の幅が広く、側から見てもSMAPと共に年齢を重ねてその時代、時代を生きてきたように感じます。
従来の「アイドル」より個々が輝いて自由な空気も纏っていたからでしょうか。
大人になっていく「アイドル」をいつでまでも応援できるSMAPという存在。
そのみんなの御馳走SMAPが解散した衝撃は一般人のわたしにもズン!と響きました。
なんで?どうして?
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共に仕事をした放送作家が自身のケジメとして上梓した本
SMAPはなぜ解散したか?
その答えを「小説」という形で表してくれたのが鈴木おさむさんの「もう明日が待っている」です。
鈴木サンは51歳でいままでやってきた放送作家の仕事を辞めることにしました。
きっかけはやはりSMAPの解散です。
20年以上彼らと共に走ってきた自分が結果SMAPの解散の片棒を担ぐことをしてしまった罪悪感と喪失感。
そうこうしているうちに全体をみながらバランスをとる自分、ものづくりにスイッチが入りずらくなってきた自分をみつけて放送作家を「辞めよう」と思ったそうです。
また出版にあたり
としています。
放送作家を引退する際、最後に「暴露本を書いて儲けて終わろう」ではなく、
人としての誠意を示した、
鈴木おさむという男の矜持がここからもじわっと伝わってきます。
マンネリが許せなかったのかもしれません。
また「ソフト老害」という言葉で自身を戒めています。
放送作家は辞めるものの、次の「ワクワクすること」をもう探して動いているので(すごい!)辞めるというより「卒業」という方がしっくりくるかもしれませんね。
もう明日が待っている
小説では一世を風靡したビックアイドルグループの登場そして陰り、そのバックで踊っていたちょっと伸び悩んでいたアイドル6人組との出会いからはじまります。
かれらのマネージメントをする「イイジマサン」、自分と同い年のタクヤ。
リーダー、シンゴ、ゴロウチャン、ツヨシ、そしてモリクン。
このグループに起きたさまざまな節目を伴走者として歩んだ鈴木さんが時間をたどりながら抑えた筆致であの時の5人を描いています。
特に東日本大震災10日後の生放送の時のこと、その後の応援支援のページは読んでいて胸がちくちくしてきて、ファンではないわたしもうっすら涙目になりました。
そしてあの『謝罪会見』。
鈴木さん自身
あの日に、僕は放送作家として、終わった。
もう明日が待っている P231より引用抜粋
と言うように、彼自身も大きな力に飲み込まざるおえなかった、その罪悪感。。
物語の最後になるにつれ、彼が語るその後の風景には乾いた風が漂い、現在の彼らの様子がさらりと描かれています。
一つの時代が明らかに終わり、変化する。
痛みを伴ったものだけれど、変化の先にもう明日は待っているのです。
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表紙が意味深デザイン
表紙をまず見て「世界に一つだけの花」なのかな?
と思いました。
本のなかにも”モリクンのヘルメットには星のマークが入っている。6色。”という下があり、これはSMAPのメンバーカラーということを知りました。
この表紙の色はメンバー6人を現しています。
表紙では一番先にグループを卒業した「白=モリクン」が離れ、
裏表紙では「白=モリクン」に続いて、「黄=ツヨシ」「緑=シンゴ」「ピンク=ゴロウチャン」がまとまって離れ、距離をあけて「青=リーダー」「赤=タクヤ」とバラけていきます。
なかなか意味深い表紙のデザインでした。。
もうこの色が再び重なり合うことはないのかな。
今日は「もう明日が待っている」を読んで感じたことを書いてみました。
あの時起きていたことが、いやあの時ばかりではなくSMAPの活動のあれこれが、解散してからちょっとだけ分かった気がします。
人生生々流転。変容していくことは悪いことではない。
もう明日は待っている、それでいいんだとなぜか納得したグリコでした。
本日も最後までお読みくださりありがとうございました♪
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